Al Quds University

きょうはふせいんさんとデート。

 

ふせいんさんとは、琉球大学で4年間勉強し博士号を取得されたという猛烈スペシャルなパレスチナ人で、わたしの知り合いのパレスチナ人の中でも一、二を争うレベルに素敵で、大好きな人(既婚・二人の子持ち)である。

 

そんなふせいんさんが、彼が学士・修士を修了し、現在教鞭をとられているAl Quds University(以下、アルクドス大学) を案内してくださるというので、嬉々として出かけていった。というわけで以下見学レポート。

 

Al Qudsとはアラビア語でエルサレムの意味だが、実際の大学はアブー・ディースという街にあり、エルサレムはイスラエルの手によって延々と築かれた分離壁を隔てた向こうにある。

 

ふせいんさんによれば、大学内で一番高い建物からは岩のドームを望むことができるとのこと。

 

大学を一通り案内してもらう。女子学生はほぼ全員ヒジャーブに体の線が出ないロングコートで、イスラム圏といえども髪をあらわにしてTシャツにスキニー、といった女子が多いビルゼイト大学とはえらい違いである。

 

ふせいんさんにそのことについて尋ねてみると、ビルゼイト大学は現在政府が置かれ事実上の首都となっているラマッラーに位置するため先進的であり、また地域的にクリスチャンの学生が多いこともあり、保守的なアルクドス大学とは全く対照的だろうとのこと。一口にパレスチナといっても、大学一つとってみても様々なのである。

 

さらに、同じくクリスチャンが多いベツレヘムも全く違う雰囲気だろうとのことであった。

 

大学内にはイスラエル拘留者についての博物館があったので案内していただいた。

 

アラビア語でأسيرという単語が「(咎なくして刑務所に入れられた)囚人」という意味を表すことを初めて知った。投獄されたパレスチナ人に関する新聞記事はいくつも読んできたが、今まではただ特に深く考えることなく、「拘留された人」という意味で翻訳してきた。(ちなみに罪を犯した囚人はمسجنです)

 

1967年以降に殉死した方の写真がズラッと並ぶ。小さな子供をふたり連れた若い女性がひとつの写真を指さして子供たちに話しかけている。彼女のお兄さん、とのこと。

 

f:id:reempalestine:20150607042022j:image

f:id:reempalestine:20150607042041j:image

 

読めないくらいものすごく小さな字で書かれた手紙がショーケースにたくさん入れられている。囚人への面会はほとんど許されておらず、できてもせいぜい5分ほど。とても十分に会話をすることはできないので、家族は思いのたけを綴った手紙をこっそり渡す。

 

f:id:reempalestine:20150607042057j:image

 

隣のショーケースにはカプセル。囚人への身体検査は非常に厳しいため、彼らは手紙をカプセルに仕込んで飲み込み、検査が終わったら吐き出す、という方法で手紙を守り抜いていたらしい。

 

f:id:reempalestine:20150607042118j:image

 

小さな小さな牢屋の再現。これは見学用に階段がついていて広いけど、ほんとうはマネキンが座っている部分の大きさしかないらしく、その幅1×1.5m、たて1.6mほど。

拷問用に作られたこの部屋では立つことも横になることもできない。ドアには外から中の様子を監視し、情け程度にもならない食事を差し入れるわずかな開閉式の窓がついているが、それ以外は何もない。囚人はただ壁にもたれて座り、暗闇の中でただ時が過ぎるのを待つしかない。

 

f:id:reempalestine:20150607042551j:image

 

Prisoners... lost feelings! と題されたパネル。

子供が生まれて間もなく投獄されてしまい、5年後にやっとの思いで出てきたものの、子供は彼女を母親だと認識できず怖がられてしまった女性の話。刑務所内の父親とは電話でしか繋がることができないため、受話器の中に父親が暮らしていると考えている子供の話。

 

f:id:reempalestine:20150607042213j:imagef:id:reempalestine:20150607042612j:image

 

刑務所内のお母さんから、子供へあてた手紙。イラストやきらきらのペンで可愛く仕上げているところにお母さんの愛情を感じる。「アーイシャ、ママが帰ったらおもちゃを何でも買ってあげるね」と書いてある。

 

f:id:reempalestine:20150607042547j:image

 

刑務所内で描かれたたくさんの絵や工作作品。写真はビーズでつくられたエルサレム、岩のドーム。細かい細かいビーズは害がないと判断されたため、刑務所内への持ち込みあるいは差し入れが許可されたようだ。

 

ふせいんさんの解説あってのことかもしれないが、大学内の小さな博物館とは思えないほどの充実度だった。夏休みということもあってか閑散とした大学のなかでも、この博物館はほぼ無人といえるほどに人がいなかったが、たくさんの人に訪れてほしい場所だった。

 

見学を終えて大学付近のピザ屋さん「Pizza Roma」(コーン、ピーマン、オリーブがたっぷりの分厚いふわふわピザで案の定イタリア要素はどこにもない。これはパレスチナの常である)で昼食をとり、セルビスでラマッラーに帰る。

 

大学からラマッラーへは直線距離でいうと20分ほどの距離らしいが、車はぐにゃぐにゃに建てられた分離壁に沿うように走るのでメチャメチャ時間がかかる。ふせいんさんはこの通勤にとられる時間と体力のせいで、趣味のスポーツがなかなかできないとのこと。こういう小さなところにも「占領」の影響が出る。

 

家に帰ってネットを見ていたら、こんな記事を見つけた。

http://jp.vice.com/program/vice-news/10479

「刑務所から精子を送るパレスチナ人」

 

世界中の夫婦が経験しているであろう「愛しあって、子供ができて、親になる」過程のたくさんの喜びがここでは奪われているのだろうな、と感じた。

はじめに

パレスチナに来てもう3ヶ月も経って、今さら・・・という感じもあるけど、まだあと半年はこっちにいる予定だし、fbはただでさえ頻繁に投稿しにくい上にアラブ人やこっちで知り合った外国人の友達がどんどん増えてきて日本語いっぱい書くのがためらわれるようになってきたし、自分のためのメモという意味もこめて、今日からブログを書くぞ。

 

わたしは2015年2月末から語学留学(アラビア語)という名目でパレスチナに来ています。

ずっと日本で暮らしていてアラブと特に関わったことがないという方々(ほとんどの人がそうだろうけど)からしてみれば、何でパレスチナ?留学とかできるの??治安は大丈夫なの???・・・などなど気になることがたくさんあるところだろうけど、その辺りはごく普通の女子大生が留学してのんびりこんなブログなど書いているという点から察していただけるかと思う。

 

あんまり前置きをたくさん書いているときっとすぐ嫌になるだろうから、いろいろ真面目なことはおいおい補足していきたい。一番の目標は楽しんで書いて継続することです。そのうえで、これからパレスチナを訪れる人の役に立つ情報を提供したり、ブログを読んでくれた方にパレスチナに関心を抱いたりしてもらえればこれほど嬉しいことはありません。

 

というわけで。